コンテンツにスキップ
Tauri

Selenium を利用する

この章の WebDriver テストの事例では、Selenium と人気のある Node.js のテスト・スイートを使用しますので、 npm または yarn とともに Node.js をインストールしていることが前提となります([完成版モデル・アプリケーション] では yarn が使用されていますが)。

プロジェクト内にテストを記述するための場所を作成しましょう。 このプロジェクト事例では「ネスト化された」ディレクトリを使用しますが、これは後ほど他のフレームワークについても詳しく調べるためで、通常は「一つのフレームワーク」だけが必要です。 mkdir -p webdriver/selenium で、使用するディレクトリを作成します。以下、この設定ガイドでは、webdriver/selenium ディレクトリ内にいると仮定します。

既存の package.json を使用して、このテスト・スイートをブートストラップ(起動)します。というのも、使用する具体的な依存関係はすでに選定済であり、シンプルで実用的なソリューションを紹介したいためです。 この項の最後の「> ここをクリック・・・」の部分に、白紙の状態から設定する手順についての設定ガイドが折り畳まれています。

package.json:

{
"name": "selenium",
"version": "1.0.0",
"private": true,
"scripts": {
"test": "mocha"
},
"dependencies": {
"chai": "^4.3.4",
"mocha": "^9.0.3",
"selenium-webdriver": "^4.0.0-beta.4"
}
}

テスト・フレームワークとして Mocha(モカ)を実行するスクリプトがあり、これは test コマンドとして利用可能です。 また、テストの実行に使用するさまざまな依存関係もあります。 すなわち、テスト・フレームワークとしての Mocha、アサーション・ライブラリとしての Chai(チャイ)、それに selenium-webdriver で、これは Node.js の Selenium パッケージです。

《訳注》

アサーション・ライブラリ assertion library: テスト時に検証結果が想定された内容かどうかを判定するためのツール。

ここをクリック(プロジェクトを白紙の状態から設定する場合)

依存関係を白紙の状態からインストールする場合は、次のコマンドを実行します。

npm install mocha chai selenium-webdriver

また、package.json"scripts" キーに "test": "mocha" 項目を追加することをお勧めします。これにより、Mocha の実行が以下のコマンドから簡単に呼び出せるようになります。

npm test

WebdriverIO のテスト・スイート とは異なり、Selenium にはテスト・スイートが付属しておらず、テスト・スイートの構築は開発者に任されています。 ここでは Mocha を選択しました。Mocha は WebDrivers とは関係のない、比較的中立的なライブラリなので、スクリプトのすべてを正しい順序で設定するには少しばかり作業が必要になります。 Mocha はデフォルトで test/test.js にテスト・ファイルを用意する必要があります。では、早速作成してみましょう。

test/test.js:

const os = require('os');
const path = require('path');
const { expect } = require('chai');
const { spawn, spawnSync } = require('child_process');
const { Builder, By, Capabilities } = require('selenium-webdriver');
// 求められるアプリケーション・バイナリへのパスを作成
const application = path.resolve(
__dirname,
'..',
'..',
'..',
'target',
'release',
'hello-tauri-webdriver'
);
// 作成した WebDriver インスタンスを追跡
let driver;
// 開始する tauri-driver プロセスを追跡
let tauriDriver;
before(async function () {
// 必要に応じてプログラムをビルドできるように、タイムアウトを2分に設定
this.timeout(120000);
// プログラムがビルドされたことを確認
spawnSync('cargo', ['build', '--release']);
// tauri-driver を起動
tauriDriver = spawn(
path.resolve(os.homedir(), '.cargo', 'bin', 'tauri-driver'),
[],
{ stdio: [null, process.stdout, process.stderr] }
);
const capabilities = new Capabilities();
capabilities.set('tauri:options', { application });
capabilities.setBrowserName('wry');
// Webdriver クライアントを起動
driver = await new Builder()
.withCapabilities(capabilities)
.usingServer('http://127.0.0.1:4444/')
.build();
});
after(async function () {
// Webdriver セッションを停止
await driver.quit();
// tauri-driver プロセスを強制終了
tauriDriver.kill();
});
describe('Hello Tauri', () => {
it('should be cordial', async () => {
const text = await driver.findElement(By.css('body > h1')).getText();
expect(text).to.match(/^[hH]ello/);
});
it('should be excited', async () => {
const text = await driver.findElement(By.css('body > h1')).getText();
expect(text).to.match(/!$/);
});
it('should be easy on the eyes', async () => {
// Selenium は色の CSS 値を rgb(r, g, b) として返します
const text = await driver
.findElement(By.css('body'))
.getCssValue('background-color');
const rgb = text.match(/^rgb\((?<r>\d+), (?<g>\d+), (?<b>\d+)\)$/).groups;
expect(rgb).to.have.all.keys('r', 'g', 'b');
const luma = 0.2126 * rgb.r + 0.7152 * rgb.g + 0.0722 * rgb.b;
expect(luma).to.be.lessThan(100);
});
});

もし「JS テスト・フレームワーク」に慣れ親しんでいる方であれば、describeitexpect などは見覚えがあるはずです。また、mocha の設定(セットアップ)と解除(ティアダウン)を行なうための、やや複雑なbefore()after()コールバックも用意されています。 テスト本体ではない行には、セットアップ・コードとティアダウン・コードを説明するコメントの記載があります。 WebdriverIO のテスト仕様の「Spec ファイル」に慣れている場合は、WebDriver 関連の項目をさらにいくつか設定する必要があるため、テスト以外のコードがより多くなっていることに気付くでしょう。

依存関係とテスト・スクリプトの設定がすべて完了しましたので、実行してみましょう。

npm test

次のような出力が表示されるはずです:

➜ selenium git:(main) ✗ yarn test
yarn run v1.22.11
$ Mocha
Hello Tauri
✔ should be cordial (120ms)
✔ should be excited
✔ should be easy on the eyes
3 passing (588ms)
Done in 0.93s.

上記の test/test.jsdescribe で生成した Hello Tauri テスト・スイートでは、it に記載した三つのテスト項目がすべて合格していることがわかります。

Selenium とともに、テスト・スイートに「フックアップ」する(別処理を挟み込む)処理により、Tauri アプリケーションをまったく修正せずに「e2e テスト」を実行することができました!

《訳注》

e2e テスト end-to-end test の略記。システム全体を「先端から終端まで」(つまり最初から最後まで)動作検証するテスト手法。自動システム全検証。システム毎にテスト・コードを準備すると工数・費用が増大するため、テスト自動化ツールが利用されています。

【※ この日本語版は、「Feb 22, 2025 英語版」に基づいています】


© 2025 Tauri Contributors. CC-BY / MIT